身是人間一断蓬 半生南北任秋風 琴書昔作天涯客 |
簑笠今成沢畔翁 夢破江亭山駅外 詩成灯影雨聲中 |
不須強覓前人比 道似香山実不同 |
|
(読み) |
身は是れ 人間の一断蓬(だんほう) 半生 南北 秋風に任(まか)す |
琴書 昔 天涯の客と作り 簑笠 今 沢畔の翁となる 夢は破る江亭 |
山駅の外 詩は成る 灯影 雨声の中 須(もち)いず 強(し)いて前人に |
比を覓(もと)むるを 香山に似たりと道(い)うも 実は同じからず |
(意味) |
自分の身は世の中にあってちぎれたヨモギのようなものだ。半生秋風に |
吹かれて南北をさまよってきた。昔は琴書を携えて天涯の客となり、今は |
蓑笠をまとって川のほとりで暮らしている。夢から覚めるとそこは江亭や |
山駅のほとりだったものだし、詩が成るのは灯影雨音の中でのことだった。 |
自分を強いて前人に例えようとは思わない。白楽天に似ていると言われる |
が、そんなことはない。 |
|
*断蓬=根からちぎれてさすらっているヨモギ *琴書=知識人の象徴 |
*江亭山駅=川沿いの東屋と山中の宿場 *香山=白楽天のこと |
|
出典: 陸游(南宋)七言律詩 「懐旧」の5句、6句の部分) |
|