千峰黛色因晴出 百谷泉聲欲暮寒 |
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千峰の黛(たいしょく)、晴によって出で、百谷の泉聲、暮な |
んと欲して寒し。 |
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(大意) |
多くの山々の深緑の色は天気が晴れたためにあらわれ、 |
多くの谷川の早瀬の水音は、夕暮れ時に涼しさが感じら |
る。 |
(出典)望大宝山 賀蘭暹(唐)「断片十一句」全唐詩) |
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*泉聲…泉聲にはいろいろな議論がある。大字源(角川)によると①泉の湧き出る |
音、湧き水の音 ②滝の音 とある。素直に解釈すると湧き水の音のようである |
が、多くの谷川の湧き水の音がそんなに聞こえるかという疑問が残る。それでは |
滝の音はよく聞こえるだろうが夕暮れの寒々しい情景の中では少し違和感がある。 |
有名な王維(盛唐)の詩「過香積寺」の中に”泉聲咽危石(泉聲聲危に咽び)” |
という句がある。”NHK漢詩をよむ”の著者 石川忠久先生の訳では”泉の水は |
高くそそり立つ岩に当たって咽ぶように響き”とある。そのまま泉の水という表現 |
ではあるが湧き水が岩にあたって咽ぶように響くとは考えにくい。この場合、川の |
上流の 早瀬の急流が岩にあたっているさまが目に浮かぶ。「百谷泉聲」とは、大 |
宝山の峰々の谷間あいまの多くの谷から聞こえてくる早瀬の水音といったところか。 |
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