野日初晴麦隴分 竹園村巷鹿成群 萬家廢井生新草 |
一樹繁花對古墳 引水忽驚氷満澗 向田空見石和雲 |
可憐荒歳青山下 惟有松枝好寄君 |
【読み】 |
野日(やじつ)初めて晴れて麦隴(ばくろう)分かる。 竹園村巷鹿 |
群れを成す。万家の廃井(はいせい)新草を生じ、一樹の繁花 |
古墳に対す。水を引いて忽ち驚く氷の澗(かん)に満つるを。田に |
向いて空しく見る 石の雲に和するを。憐れむべし、荒歳(こうさい) |
青山の下。ただ松枝のみありて 君に寄するに好し。 |
【意味】 |
野村の日がようやく晴れて麦畑がはっきり見える。村里の竹林には |
鹿が群れをなしている。多くの家々の壊れた井戸には春の草が芽吹き |
古い墳墓に向かい合うように一本の樹が美しく咲き誇っている。水を |
引いて田に入れようとしたが驚いたことには氷が谷川にいっぱいで |
水が流れない。石より雲が生じて雲と石とが相和すのをぼんやり見て |
いる。ああ悲しいなぁ…盩厔山(ちゅうちつざん)の下(もと) |
乱後の飢饉にて君にあげるものが何もない。君にあげれるものは |
惟 松の枝くらいか。 |
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*野日…野村の日 *鹿群れをなす…実際、鹿がいるわけではない。 |
村の荒廃のようす。 *荒歳…飢饉の年 *青山…盩厔山 |
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【出典】早春帰盩厔舊居却寄耿拾遺湋李校書端(中唐・盧綸) |
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