瓊姿只合在瑶臺 誰向江南處處栽 雪満山中高士臥 |
明月林下美人来 寒依疎影蕭蕭竹 春掩残香漠漠苔 |
自去何郎無好詠 東風愁寂幾回開 |
【読み】 |
瓊姿(けいし)は只 合(まさ)に瑶臺(ようだい)にあるべきに 誰ぞ |
江南に向いて処処に栽(う)うる。雪満ちて山中 高士臥(ふ)し |
月 明らかにして 林下 美人来たる 寒は依る 疎影 蕭蕭(しょうしょう) |
たるの竹 春は掩(おお) う 残香 漠漠たるの苔 何郎去りて |
自(よ)り 好詠(こうえい)なし 東風 愁寂 幾回か開く |
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【意味】 |
玉のような美しい姿をした梅花は月の仙宮にあるべきなのに、誰 |
がこの梅を江南の処処に植えたのだろ。梅花が咲くと雪が山を |
真っ白にしたように見え、雪が満ちた山中に高潔な人格者が寝て |
いるように見え、また月の明るい樹の下に美人が来たかと疑われ |
る。寒さの中、梅の疎らな影に寄り添うのは さやさやとそよぐ竹。 |
春には梅の残り香がびっしりと敷きつめられた苔を覆い隠して |
いる。何孫が去ってしまってから梅を詠じた良い詩はなく、春風が
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吹くたびに、寂しく咲いてきたこたことであろう。 |
⋆瓊姿…玉のように美しい姿 ⋆瑶臺…月世界 |
⋆漠漠…一面に敷き詰められたさま *蕭蕭…さやさやとそよぐさま |
*何郎…何孫(かそん)のこと。南朝梁の鄙の人で梅を好んだ。 |
【出典:梅花(高啓・明)】 |
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