池館深深鎖翠涼 課餘多暇日偏長 屋連湖水琴書潤 |
窗近花陰筆硯香 吾道尚存貧亦楽 客身長健老何妨 |
十年心事閒掻首 厭聴蝉聲送夕陽 |
【読み】 |
池館 深深(しんしん)として翠涼 鎖(とざ)し 課餘(かよ)多暇にして
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日 偏長たり 屋(おく)は湖水に連なり 琴書潤い 窓は花陰に近く |
筆硯 香ばし 吾道 尚 貧しくもまた楽しみ在り 客身(かくしん) |
長健にして 老 何をか妨げん 十年の心事 閒 (しずか)に首を |
掻く 聴くを厭う 蝉聲 夕陽を送る |
【意味】 |
池辺の館は深く翠緑の涼しさを閉じ込め 授業の後の余暇が |
ますます長く感じられる。館は湖水に接し、琴や書物が湿って |
窓辺に花の影が映り、硯の墨の香りが漂っている。私のこれ |
までの人生は貧しくても楽しかった。異郷の地にいても元気で |
年老いているが何の問題もない。この十年間、心に思うことと |
現実が違い恥じているありさま。沈む夕陽を見ながら蝉の鳴き |
声にも聞き飽きている。 |
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*池館…池のほとりの館 *客身…異郷にいる身 |
*心事…心に思うことと現実。万事。 *掻首…過ちを恥じて |
いるさま。とまどっているさま |
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【出典:書館(黄庚・南宋末)】 |